人間の心に潜む罪

創世記37章12~36節

ヨセフの兄たちの陰謀は、人間の内にある憎しみの恐ろしさが巧みに展開されていきます。ヨセフが近づいてきたときに兄たちは、彼を殺してその死体を穴(水の涸れた縦穴の井戸)に投げ込むことに決めました。彼らは、憎悪に駆られてヨセフを亡き者にしようとしたのです。つまり、実力行使による排除です。憎しみを心に秘める人は、いさかいを引き起こします。豪雨を集めた濁流のように様々な物を飲み込んでしまうのです。一般社会における「いじめ」は、嫉妬や憎悪が露呈したものと言えるでしょう。あるいは、いじめる側の劣等感から来るのかも知れません。けれども、ヨセフを気遣う兄がいます。それが長兄のルベンです。彼は、ヨセフを殺すことに反対して、穴に入れることだけを兄弟たちに提案します。後で戻って来てヨセフを救い出し、父のところに帰すつもりでいたのですが、すでに、ミディアン人たちヨセフを引き上げ、イシュマエル人に売ってしまったのです。ルベンは、悲しみのあまり、崩れ落ちます。一方、ヨセフは、兄たちの策略に対して一言も発していません。それは、「神はヨセフと共におられる」というメッセージを私たちが聞くことにより、ヨセフの信仰を学び取ることを示唆しているのです。

                    2019年7月14日 加山彰一