必要なことはただ一つ

ルカによる福音書10章38~42節

上記の聖書箇所は、2000年の時の隔たりを何一つ感じさせないほど鮮やかに、素直に、そして美しく、マルタとマリアの二人の姉妹を私たちの前に描き出しています。マルタは、確かに行動的であり、実践的でした。その意味において、マルタの行為はどこまでも「もてなし」という周辺の事柄でした。やがて彼女は、そのことに熱心のあまり、主イエス・キリストそのものを見失い、さらに心を取り乱してしまったのです。しかしながら、主イエスは、マルタを叱ってはいません。ただ、マリアが選び取った「必要なただ一つ」のものを「いくつのも分割」したマルタに示したに過ぎなかったのです。主イエスは、命に関わる人間の真の姿を、この愛する姉妹に語りたかったのです。二人の女性に注がれる主イエスの眼差しは、柔和に満ちていました。しかし、その慈しみの中には、偽者の放つことのできない、厳かな輝きが讃えられています。主イエスの真実が、たそがれの中に点るともし火のように、マルタやマリアの内に、そして、私たちの内に灯されるのです。

           2019年2月24日 加山彰一